「インプラントが困難な場合」

2007/11/11

img1%EF%BC%91.jpg

最新の画期的な治療法であるインプラントですが、残念ながら困難なケースも多々見受けられます。全身的な疾患をお持ちの方や、骨が再生できないほど減ってしまっている場合などです。

一般的に、骨が不足している場合には、骨造成(骨を増やす処置)を行い、インプラントを行うのに十分な骨を回復させる方法がとられます。これに関しては別のコラムでお話ししますね。ここでは、全身的な要因、局所的な要因について、まとめておきます。

■全身的な要因について

• 重度の糖尿病
口腔内には、多くの雑菌が存在しています。
糖尿病の方は細菌の感染に弱く、とくに進行した糖尿病の場合は、歯が感染して歯周病になる確率が高まります。
歯を支える歯周組織に炎症を起こす歯周病は、重度になると、インプラントの土台ともいえる骨にまで影響を及ぼす場合があるので、適切な治療を行う必要があります。
糖尿病の患者さんが、インプラントを行う場合は、血糖値を低くコントロールする必要があります。
良好に血糖値がコントロールされている場合は、インプラントは可能です。

• 重度の腎臓病
重度の腎臓病の場合には、免疫が低下して傷が治りにくく、骨との結合が難しい場合があります。
人工透析を行っていて、血液の流れを良くする薬を服用されている場合も、外科処置の後の止血が困難になる可能性があります。
インプラントが可能かどうか、主治医の先生ご相談の上で判断する必要があります。

• 重度の肝臓病
重度の肝疾患がある場合、血液が止まりにくくなる可能性がありますので、インプラントが可能かどうか、主治医の先生にご相談下さい。

• 骨粗鬆症
骨粗鬆症の場合、増骨術を併用することで、インプラントが可能な場合もあります。
骨の量(幅、厚み)や状態によって、治療が可能かどうかが異なってきますので、専門医にご相談下さい。

• 喫煙によるリスク
喫煙習慣もリスクを高めます。喫煙が、歯周病に対する免疫力を低下させてしまうからです。
血液中に入ったニコチンは、白血球の貧食作用を低下させ、血管を収縮させます。
口腔内の血管は、極めて細いため、血流が阻害されやすいので、収縮すると白血球が行き届かなくなります。
そのため、口腔内に細菌が増殖しやすくなります。
喫煙は歯周病のリスク要因となりますので、健康な歯のためにも、インプラントのためにも、控えて頂く事をおすすめ致します。


■口腔内の要因について

• 歯周病
歯周病は歯槽膿漏とも呼ばれる疾患で、歯周組織に炎症を起こし、徐々に破壊してしまう病気です。歯がぐらぐらになって抜けてしまうのは、加齢のせいではなく、歯周病のせいであることが多いです。
歯を支える土台となる部分に炎症を起こす疾患のため、歯周病の治療を行い、歯周組織の状態を整えてから、インプラントを行いましょう。

• ブラキシズム
ブラキシズムとは、咬合神経症とも呼ばれ、無意識のうちに極度に歯をすり合わせたり、噛み締めたりする、機能性咬合習癖の一つです。
肩こり、歯の破折、睡眠障害、補綴物の脱落、クリッキングなど顎関節の症状、歯の動揺、重篤な歯周炎の進行などの原因となります。
また、不定愁訴を訴える方、歯の痛み(自発痛や打診痛)が消えない方においても、ブラキシズムが関与している場合があります。
ブラキシズムには3つの要素があり、歯をすり合わせるグラインディング、食いしばるクレンチング、上下の歯をカチカチと小刻みに接触させるタッピングがあります。
強すぎる咬合癖が原因で、歯周組織にダメージを与え、健康な歯でさえ失う場合がありますので、ブラキシズムの傾向が顕著な場合には、注意が必要です。


インプラントは埋入の際にオペが必要なので、血が止まりにくい方、免疫力が極度に低下している方等、外科処置が困難な要素をお持ちの方の場合は、治療が行えない場合もあります。 インプラントを行う前には、お口だけでなく、全身の状態を含めて、専門医にご相談下さい。

  • facebook
  • instagram